石川県輪島市の「ごちゃまるクリニック」は、医師、看護師、作業療法士など多職種による「ごちゃまぜ」で「まるごと」の支えあいを掲げてきた。
その姿勢は、建物にも表れている。
連載「まるごとのケア、能登から」
人口減少が進む能登半島の被災地で、医療を超えた地域まるごとのケアを目指すクリニックの2年を追います。全5回連載の第3回です。

かつて金融機関だった半円形の3階建ての建物は、1階がクリニック。総合診療医の小浦友行さん(46)と妻で小児科医の詩さん(44)が外来を受け付ける。
2階と3階は詩さんが理事長を務めるNPO法人が運営する10代の子どもたちの居場所「わじまティーンラボ」だ。
クリニックは昨年元日の能登半島地震で損傷し、4カ月間、医療用コンテナで外来診療を続けた。5月、建物の修繕が済み、本来の1階で「再出発」を果たす。
ところが、そのわずか4カ月後の9月21日、奥能登を記録的な大雨が襲った。
その日は2階のティーンラボでイベントが予定されていた。
ティーンラボ館長で友行さんの弟の明生さん(42)は、朝からインターンの大学生とその準備をしていた。
市内の旧輪島駅周辺が冠水しているとSNSで知った。
地震の際に避難所になった200メートルほど先の市の施設に行こうにも、道路が冠水していて近づけない。
みるみるうちに周辺の水位が上がった。
流されないように大学生と手をつなぎ、500メートルほど離れた実家まで、腰まで泥水につかりながらなんとかたどり着いた。
雨脚が収まってから、明生さんと詩さんが様子を見に戻ると、クリニックがある1階は1メートルほどの高さまで浸水していた。医療機器は水没し、カルテや薬剤は泥まみれになった。

被害の全容がわからない大混乱の中、「ごちゃまる」の看護師たちは動いていた。
安全そうだった浦征爾さん(39)のアパートに、たまたま車で移動中だった萩原四季さん(33)ともう一人の看護師が集まった。浸水した地域に住む在宅患者さんたちに片っ端から連絡し、安否を確認した。
どうしても連絡が取れなかったのが、認知症の症状がある高齢の男性。もう、見に行くしかないと向かうと、男性は何が起きているのかあまり把握しないまま、でも自宅2階に避難していた。浦さんが男性をおぶって助け出し、最寄りの避難所に連れて行った。
「止まらせてほしい」
その日の夜、明生さんと詩さ…
